
M1のプロジェクトは、1972年に、BMWミュンヘン博物館の開館を記念して作られたBMW ターボ クーペから来ており2002用の直列4気筒ターボをミドシップにマウントしたこの車は、M1プロジェクトの精神的なモチーフとなった。
そして、1979年10月、パリサロンでベールを脱いだのです。モータースポーツを意味する“M”を冠した最初の生産モデルで、BMW史上異彩を放つミドシップのスーパースポーツです。
開発段階の初期にE-26と呼ばれていたM1は、ヨーロッパGTカーレースへの参戦を目標にして立ち上がり、狙うカテゴリーはポルシェの独壇場だったグループ4、及びグループ5(シルエットフォーミュラ)に定められた。
自製となる4.5リッターV型12気筒エンジンを用意し、巨匠ジョルジェット・ジウジアーロをボディデザインに起用した。しかし、オイルショックの風が吹く一般世論から、大きく重く、明らかにエコロジーとは無縁なV型12気筒エンジンは葬り去られ、更にBMWのレース用車両の開発を手がけていたBMWモータースポーツ社の開発・製造キャパシティは既存のプロジェクトで手一杯で、とてもM1の開発を請け負っていられる状況ではなかった。
そこで、経営破綻の危機に限りなく近づいていたランボルギーニ社にシャシー関連製造の全てを託す事となったのです。
開発には、レーシングカー関連の設計を手がけ、のちにレーシングカーのシャシーを製作する会社を興したジャンパオロ・ダラーラが行った。シャシーには角型鋼板で形成されたセミスペースフレームを採用し、全ての応力を強靭なフレームのみで受ける構造となっている。そのため、ストレスのかからない外板は全てFRP製で、ボルトオンと接着を併用して取り付けていた。
鋼管と角型鋼板により構成されたフレームに前後ダブルウィッシュボーンのサスペンションを備えた、
純レーシングカーのようなシャシーに、採用を撤回されたV型12気筒エンジンに代わり、ツーリングカーレース用の3.5CSLの為に開発された、M88型 直列6気筒DOHCの3453ccエンジンが選ばれた。
3.5リッターの排気量を持つこのエンジンは、クーゲルフィッシャー社の機械式インジェクションを組み合わせ、277馬力をリミッター直前の6500回転で発生させ、低回転域から分厚いトルクを発生する特性は、典型的なBIG 6 エンジンに設定された結果といえる。
このユニットは長大であり、その結果ホイールベースが長くなってしまう弊害が出たが、エンジンオイルのドライサンプ化で、かなり低い位置にまで重心の高いエンジンを下げて搭載する事ができた。そのため、クランク軸は地上から18.5cmに設定されている。
開発段階で様々な変更を余儀なくされたしたM1は、実際の生産段階において、それ以上の変遷を味わう事となった。
まず開発を担当したランボルギーニはシャシーの製造に着手が、その生産スピードは、あまりにも遅く、それはBMWの腹を煮えくり返させる事となってしまった。破綻寸前のランボルギーニをあっさりと見限り、ランボルギーニのフレームを担当して来たマルケージ社から、シュツットガルトのバウア社に委託を決定したものの、肝心のFRPボディの生産は、イタリアに拠点を持つ、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン社にシャシーを送り、FRP外板取り付け塗装などを行い、最終的にはBMWモータースポーツによってサスペンションやブレーキ関連の組み付けを行っていた。
非常識なまでに生産能率が悪く、週2台という生産ペースは遅れに遅れ、月3台前後がやっとという有様だった。到底グループ4の参戦条項である、「連続する12ヶ月間に400台の生産」を満たす事ができず、それまでシャシーの製造をのみを担当していたバウアに最終工程の一部を負担させ1980年の後期にようやくグループ4参戦の足がかりを掴むことができた。
…とはいっても、これは「連続する12ヶ月間」という項目を特別に免除された事により達成された。
1981年からグループ4に参戦出来るようになったものの、翌年には規則改正による新カテゴリーが実施され、M1によるBMWのモータースポーツ活動は、意気込みとは裏腹に短命に終わってしまった。
そんな不運なM1であるが、運動性能は、277PS/6000rpm、33.0kgm/5000rpmのパワーによって最高速度262km/h、0-100km/h加速5.6秒というハイスピードで走らせた。1981年までに456台が生産されたのみで打ち切られてしまい、スポーツカーレース制覇というBMWの野望もついえた。
BMWらしい高品質と高性能、そして快適性を備えた希有な存在でありながら、プロジェクトとしては失敗に終わったM1は、悲劇のスーパースポーツであった。
●サイズ:全長4360mm/全幅1824mm/全高1140mm
●車輌重量:1300kg
●エンジン:3453cc 直列6気筒
●最高出力:277ps/6500rpm
●最高速度:262km/h

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