規則で雨合羽は雨合羽の下に遊園地のユニホームが透けて見えるように半透明の物でなければなりませんでした。そのような雨合羽は既製品では100円程度の生地が薄い使い捨て雨合羽しかなく、遊園地で仕事してると私の体型では半日と保たずビリビリに破れてしまってました。
一応、遊園地側から雨合羽の支給もありましたが、自分の体型で雨が降る都度、ビリビリに破いてたのでは支給されるのも申し訳なく、自分で自分に合う大きさの雨合羽を買ったりもしてました。それでも、完璧に合う雨合羽は無く何回か使うと破れてしまう有り様でした。
そんな私を見かねて、同僚が昔の職を生かして私に合う特別サイズの雨合羽を作ってくれたのです。おかげ様で私は遊園地を退職するまでの間、その雨合羽をずっと使い、雨合羽を無駄に破って捨て買い替える事も無くなりました。世の中には凄い職人が思いがけない所に居るもんだ…と思ったものでした。
そして、現在、私は期間雇用として郵便局に勤めています。郵便局に数年も勤めていれば私の素性も次第に知られてしまい、って、別に隠してた訳じゃないけど、合間にデザインやイラストの仕事をしてると知られると、周囲から「勿体ない」との声が聞こえてくるようになりました。「それだけの才能があったら郵便局で働かなくともソッチで食えるんじゃないの?」ってね。
…、この言葉って、以前私が遊園地に勤めていた頃に特製の雨合羽を作ってくれた同僚に言った言葉そのものなのですよね。
遊園地で働いてた頃、非正規雇用の職員の多くは、それぞれに確かな腕を持つ職人でした。それぞれにその腕をボランティア的に使い仕事をされてました。ボランティア的にと言えば聞こえは良いですが、都合良く利用されていたと言うのが正しい言い方かも知れません。
時給で雇われる非正規雇用ですが、その中には専門的な業を必要とされる業務を任される事もちょくちょくありました。電気技師の資格を持つ者は遊園地の電気系トラブルや改良などに都合良く働かされていました。
本来ならば電気系の業者を呼び整備料金を支払うべきところを都合良く前業務が電気職人だった人を時給で使うのですからね。
人の心が有るならば、業者に10,000円払うところなら時給以外に特別手当として5,000円でも支払ってやれよ!と思ったものです。
私はそういう利用のされ方が嫌だったので、あえて前職を語らず黙っていました。
そう言えば、規制緩和で派遣会社が認められるようになった頃、「街には手に職を持っているが、何らかの理由で働く事の出来ない人が多くいる。派遣業が認められれば、その方達の腕を有効に使え、そして、何らかの理由で働く事の出来ない人の多くが助かる事になる。」なんて言われてたっけ。
確かに、遊園地で働いてた頃、「手に職を持つ多くの人の職場が何故遊園地なの?」って疑問に感じた事もありました。国が言ってた事はあながち間違いではなかった。…ただ、机上論だったって事を除けばね。
職人が腕に業を身につけるまで並々ならぬ努力と相当な自己投資をしてきてるんですよね。自己投資も手に職を身に付け働けば、いずれは自己投資以上の物が帰ってくる見返りを期待しての投資なのですよ。
それが現実には、私の場合だと「このぐらいのイラストはKOJIさんなら簡単でしょ。ついでに描いてよ。」と、まぁ〜、こんな言われ方をよくされたものです。ついでに描くって事は無料の仕事かい?凄く努力して自己投資もして来た業を、本当に軽々しく都合良く利用しようとするもんだ。
こんな人の為に自分の苦労して身に付けた業を使うのは本当にバカらしい。金もかけて苦労して身に付けた業だからこそ、それなりの対価が欲しいというのは人の常だろうと思います。
苦労して身に付けた業をこんなにも雑に扱われるくらいなら、非正規雇用でも良いから誰にでも出来る仕事で雇われ金を貰った方が良い。まぁ、そういう結論にもなるだろう。
これが私が感じた「手に職を持つ多くの人の職場が何故遊園地なの?」って疑問に感じた事の答えなのかも知れません。
確かな腕を持つ職人が街に溢れている。その人達を有効にという事で派遣業をと言う所までは良かったのだろうけど、その人達のプライドまでは考えられなかったのが流石は国の機関ってところかな。
結局は、コスト削減コスト削減で安価な物をという事で、良い物をという価値観がなくなってしまって、確かな腕の人の行き場がなくなってしまったのが今の社会のように感じてしまいます。
そんな事を今の職場で「それだけの才能があったら郵便局で働かなくともソッチで食えるんじゃないの?」と言われ、改めて考えてしまいました。
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